先月、銀座シャネル・ネクサス・ホールでリリアン・バスマンの写真展へ行ったきた。バスマンは、1948年にファッション誌のハーパース・バザーの写真家としてスタートする。女性が女性のモデルを撮ることのメリットもインタビューで語っていた。ヌードを撮っても写真家が女性なので、モデルも羞恥心もなく安心してリラックスした状態で撮影ができるそうだ。
以前、広告の仕事をしていたとき、外人モデルを撮影しているフォトグラファーがモデルに怒鳴りつけていたことがある。僕は、モデルの表情を最大限に引き出すためにスタッフと一緒に誰よりもスタジオ入りしたものだ。なぜかというと、現場の空気がリラックスしたものでないとモデルの表情やポーズが硬くなってしまうからだ。 僕たち現場スタッフは、みんなでモデルを見ているけれど、モデルから見えているのは、怒鳴り散らしているフォトグラファー、そのアシスタント、アートディレクター(これは僕)、僕のアシスタント、スタイリスト、スタイリストのアシスタント、ヘアメイク、スタジオマン数名、そして、腕を組んで眉間にシワを寄せ難しい顔をしているクライアント数名が見えているはずだ。こちらが、みんな笑顔でいればモデルだって自然と笑顔になる。と、いつもそう思っているのだが、現場の空気を壊す人がいる。生身の人間を撮るとはそういうことだと思うのだけれど。 バスマンの旦那さんもフォトグラファーで、若い頃は彼女のヌード写真を撮っていた。だからこそ、モデルの表情の引き出し方を知っているのかもしれない。 それにしてもどの作品も洗練されたモノクロームの美しさと、大胆なポーズと構図が絵画的だった。バスマンは、大好きな写真家の一人で写真集も持っていたので、今回、オリジナルプリントを見ることができたのは大変な収穫だった。当たり前だけど、やっぱり、写真集で見ているよりも現物は違う。
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