弱さはつねに過激である

スチール製のフォンタナの絵を見つけた。


フォンタナといえば、白いキョンバスをナイフ切り裂いた、究極のミニマムアートが有名だ。ナイフという、一歩間違えば人の命さえ奪ってしまう凶器に、切り裂かれた白いキャンバスはどこか繊細で脆さを感じてしまう。ナイフを振りかざす時に、スッという音が聞こえてくるようでもある。 それに較べ、この絵は鉄板を鋼鉄のナイフで切り裂いた痛々しい絵である。本当は、ナイフという凶器を美化した白いキャンバスよりも、この鉄板を切り裂いた表現の方が、人間の本来持っている原始の感覚をうまく表しているのではないだろう? この絵と対峙した時、顔で笑っていても自分の内面を見透かされたような感覚におそわれた。「人のためだ、世のためだ」といっていながら、実はジェラシーで、はらわたが煮えくり返りそうな時がある。 フォンタナが目指したのは、原初の人間がもつ不可解な感覚である。何か自分では理解不可能なことに直面した時、音楽的な感覚、リズムの感覚、それらの条件を発展させていくことが目的だそうである。 現代社会においても頭では分かっているけど、心の底からメラメラゴーーーー、と何かに突き動かされることが誰にでもあるに違いない。理性ではなんとか押さえ込もうとしても、どうにもならない。それが太古から持っている人間の感覚なのであろうか。 この絵の切り裂かれた部分は、人間の心臓をえぐり出そうとでもしているはずなのに、どこか感情がリズムとハーモニーを奏でているとでもいいたげな表情だった。僕自身、思慮深い大人のつもりであったが、実は原始の人々となんら変わらない感覚も持ち合わせいる自分に正直驚いた。松岡正剛の「弱さはつねに過激である」という言葉がぴったりである。

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美しく、輝く、輪を求めて。

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