父を連れて、弟と3人で埼玉の森林公園へ行った。
風景は、すっかり秋めいてきた。あんなに厳格な父もすっかり年を取り、背中を丸め杖をついて歩くようになった。一時はアルツハイマーとまで診断が出た。アルツハイマーのことを調べてみたが、父の症状はアルツハイマーではない。病院では、婦長から毎日薬を飲むように指示されていた。僕は、父に「薬は絶対に飲むな」と言った。
父も多くの医療の本を読んでいたので、飲んだふりをしてゴミ箱に捨てたり、忘れたふりをして飲まないようにしていた。婦長は僕に「お父さんは、物忘れが激しくて、薬を飲むのを忘れてしまうので、飲むように言ってほしい」と言われたので、「その前にアルツハイマーである診断書を見せてほしい」と言ったのだが、婦長は「医師の指示なので」と言うばかりである。明らかに薬で儲けようとしているのがミエミエである。
僕は、岩田明先生の本を読んで調べたところ、その薬はアリセプトというもので、アルツハイマーでもないのに患者に処方する医師が多いらしい。病院では、アリセプトをメーカーの指定している量より多く処方して利益を得るところもあるらしい。
では、アルツハイマーではないとしたら、認知症かもしれないが、どうやって治せばよいのか?知り合いの自然免疫の先生に聞いてみた。ヨーロッパでは、自然療法で治すのが常識になっているらしい。自然療法の場合、患者の手をさすってあげたり、背中をさすってあげたり、そうすることによってオキシドシンというホルモンが分泌されるらしい。そのオキシドシンとは、今、注目を集めている幸せホルモンといわれるものである。なんのことはない、スキンシップや触れ合う心のことだ。
つまり、認知症の原因は、孤独感なのではないだろうか?それから、僕は、できるだけ父に会い、冗談を飛ばし笑わせせるようにしたところ、少しずつ、回復してきた。たまに物忘れもあるけれど、それは愛嬌ということで。 森林公園の池にいた白い鳥をみて、父は、「鶴だ!」と言った。僕は、「あれは鶴じゃないよ、鷺だよ」というやりとりに、やはり認知症かと頭を過ぎる。
でも、そのあと、車でドライブ途中に山林を散策してみようということになった。偶然、埼玉の辺ぴな山林に細川忠興の山城跡と書いてある石碑があった。僕は父に「細川忠興の自害したクリスチャンの奥さん誰だっけ?」「細川ガラシャだ」と即座に答えた。それから、歴代天皇の名前から、古事記の話から語り始めた。「な〜んだ、すっかりボケたかと思っていたよ」と僕は冗談ぽく言うと、父は「まだまだ、お前には負けない」と笑った。
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