こつこつと描くこと、やっと6点目の作品です。
札幌郊外で見つけた、トラクターを描いてみた。この素描シリーズは、仕事と違って、コンセプトだのプレゼン戦略だの考えなくていいのです。だから、描きたい時に描きたいものを描く。ただ、それだけ。でも、絵というのは潜在意識の表れなので、きっと心の奥底で何かがふつふつと芽生えているのでしょう? それは、何なのかを考えてみると僕が10代の時に読んだ、五木寛之の「青年は荒野を目指す」という小説に影響を受けているのかもしれない。親のレールに敷かれて人生を歩むことに疑問を感じた青年は、本物のジャズプレーヤーを目指して、トランペットを片手に世界を旅する。その珍道中で出合った出来事は、平々凡々と日々を過ごす若者とは違って、お金では買えない多くのものを手入れることになる。 喜びもあれば、居たたまれない悲しみもあり、傷つくこともあったりする。人種や国境を超えると様々な価値観に出合う。そんな中で、多感な青年は人生の深みを増していき、音楽の表現に生かされていく。(ああ、また悪い癖で分析し始めている。職業病だね) この素描シリーズは、荒野に無人化されたサイロだったり、廃墟だったり、荒々しい風景の中に開拓民の逞しさを感じ取ってもらえればと思い描き出した。いや、描いているうちに『自分にそう言い聞かせた』と言った方が正確かもしれない。若い時は、表現テクニックに走っていたけど、今は視覚的に飛び込んできたことは、人生というフィルターを通して感じ取ることができるようになってきた。 このトラクターを見て、まだまだこれからの人生、開拓していけると思えてきた。つまらない大人になんかなりたくない。いつまでも荒野を目指す青年でありたい。そんなことを想う毎日です。
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