行き詰まったとき

仕事に行き詰まった時、ちょっと出掛けてくると言い残し、車で高走道路をかっ飛ばす。会社を飛び出すとドアの後から「社長、打合せ....」と聞こえているのだけれど、すでにエレベーターに乗り込んでしまっている。


気が付くと、横浜まで来ていることがある。特に車好きというほどでもない。車、命みたいなのはあまり好きじゃない。なぜかって、メカに頼るのはあまりインテリジェンスな感じがしないのだ。もっと、文学的に、そして情緒的に車のことを語りたい。と言っても車が嫌いなわけでもない。その割には、ホイールはスピードラインだ、タイヤはピレリだ、などとうるさいけれど。 どっちなんだ?好きだ。そう、好きだ。この雰囲気。スペックではなく、この情感が好き。ドアを開け、ボムッという音とともにシートに身を沈める。体を包み込むようなタイトなレザーシート。やっと、1人の空間になって安堵する。 ひと呼吸を置いて、エンジンをかける。車体がちょっと身震いする。ギアをローに入れ、重いステアリングを回しながら発信する。ハンドルは、10時10分の位置に握る。大型車に乗っている人で傲慢に片手をハンドルのてっぺんに手首をひっかけて体を斜めにして運転している人がいるけれど、あれはかっこ悪い。 車は応接室じゃないんだ。リラックスして運転するものではない。一歩間違えば、凶器にだってなるんだから、緊張感を持って運転しなければならない。僕は、ずっとマニュアルしか乗って来なかったから、3つペダルがあって忙しい。操作しているという感じがする。空いている高速を走ると、エンジン音が雄叫びをあげて、音楽なんか聞こえない。BOSEのスピーカーなんか、意味ないじゃないか! 今日は、母の誕生日。だから、スタッフを振り切ってでも1人になりたかった。北海道の母に車の中からハンズフリーに切り換え電話する。「元気?誕生日おめでとう!」なんだか、ちょっと照れくさい。それだけ言って、「忙しいから切るよ」別に忙しくもないのに...運転中じゃないか? 横浜に着くと、港の見えるオープンカフェで、お気に入りのウォーターマンの万年筆とノートを出してアイデアを書き出す。さっきまで、行き詰まっていたのはなんだったんだろうと思う位、すらすらと書き出すのだった。

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美しく、輝く、輪を求めて。

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