燐光

小樽に近い、祝津という岬で海底をうごめく燐光を見た。

ある雨の日、日本海の海面を見ていると海底から何かが光り輝き浮上してきたように見えた。雲の隙間から夕陽が海面を照らし出しただけだったけど。


この光景を見て、ジュール・ヴェルヌの「海底二万里」を思い出した。1870年に発表されたこのSF小説は、現代にも通じる世の中の警鐘とも言える内容だった。「その怪物は大海原に姿を見せた。長い紡錘形のときどき燐光を発するクジラより大きく速い怪物だった」と物語は始まる。その怪物は、燐光を発しながら船舶に近づいてきて船体を真っ二つに切り裂くのである。


これが、反逆者ネモ船長が指揮する、潜水艦ノーチラス号である。ネモ船長は、地上の生活に背を向け、地上の人間に対する復讐の念に燃えて海底を世界中旅する。人間社会と人間の創り出した文明に対する深い不信感によって、自らの部下と娘を引き連れて、理想の海底都市アトランティスへと向う。

現代なら、「太陽光発電による充電のため、海面近くに浮上した」と書けるかもしれない。ノーチラス号は充電が終わると、どす黒い雲がさっと明るくなり、燐光は海底へと消えていった。


そんなことを夢想しているうちにいつの間にか雨はあがり、優しい光が雲の隙間から海面を照らし出していた。

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美しく、輝く、輪を求めて。

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