零戦

仕事の途中、靖国神社へ立ち寄った。35年前、祖母を車で東京を案内していた時、「どこか行きたいところある?」と聞いたら、「靖国神社へ行きたい」といった。


子供頃から、同居していた祖母は、母方の祖母。旦那さんは、陸軍大尉。家族は、樺太に疎開し、僕の祖父になる陸軍大尉の旦那さんは、終戦直後、ソ連が攻め込んでくるので、家族と部下達を先に北海道へ避難させ、自分は生きて帰ってくることはなかった。



祖母は、明治生まれの女性で頭も最後までしっかりしていたが、あまり戦争のことは語りたがらなかった。99才になった白寿のお祝いの時に戦争のことを聞いておこうと思った。「あの頃、どうだった?」と僕は聞いた。祖母は、しばらく遠くを見つめ「寝ていると、朝早く、ざっ、ざっ、ざっ、と当番兵数名の足音が遠くから聞こえてきて、ドアの前に立ち、ノックの音が聞こえる時が一番嫌だったよ」つまり、部下達が、祖父を迎えにくるわけだ。そして、一度出て行ったら、帰ってくる保証はない。祖母は、それ以上語らなかった。僕もその光景が頭に浮かび、それ以上聞かなかった。



祖母は、101才眠るようになくなったが、その遺品から、僕が連れて行った時に靖国神社からもらってきた、神風特攻隊の両親へのメッセージを印刷してある紙切れが出てきた。誰だって、戦争は好きなわけないけれど、あの時代に生きた人々は、そう簡単に戦争反対というわけにはいかないのではないだろうか?祖母は、時には、命をかけて守るものがあるとでも言いたげだった。


僕は、零戦の前で背筋が伸び思わず敬礼した。祖母が「姿勢が悪い!」と僕の背中を叩いたような気がした。おあばあちゃん、あちらでおじいちゃんに会えたかな?涙が出てきた。


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美しく、輝く、輪を求めて。

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