アーティゾン美術館でコンスタンティン•ブランクーシ展を開催していたので観てきた。
ブランクーシは、ルーマニア出身で20世紀前半にパリで活躍した彫刻家。若い頃にイサム・ノグチの伝記を読んで知った。
ブランクーシの作品を観れば、イサム・ノグチがなぜあのような造形に至ったか、その影響力を垣間見ることができるに違いない。
作品の多くは、人体や鳥などをモティーフに石や木の塊から形を掘り出す直彫り技法によるもので、ブロンズに鋳造され素材の特性を生かした仕上げを特徴とする。極限まで単純化されたフォルムはとその形式は、ロダン以降の彫刻に革命を起こしたといっても過言ではない。
世界中を見渡してもブランクーシの作品を集めるのは容易ではなく、展覧会が開催される機会は限られてきたが、創作活動の全般を紹介するのは日本の美術館では初の試みとなるようだ。
女性の頭部の表現を探求していった作品のひとつの「ミューズ」は、流線型をした楕円の造形が特徴的で、首の上にしなやかに置かれた頭部が女性らしさの理想を表現している。ここまで単純化したフォルムに当時の人々は戸惑いを感じたに違いない。1909年に画家のモデリアーニがブランクーシと出会って、それまでの様式を劇的に変化させたとある。
「ミューズ」 左側の壁には、モデリアーニの原画が展示されている。
「眠れるミューズ」は、マン・レイの作品、アフリカの仮面と女性の顔を隣り合わせた写真が、近しい親交から呼応し合ったであろうことが窺える。この造形性は、最も早い時期からアフリカやアジアの彫像の影響があったものと思われる。
「眠れるミューズ」
「雄鶏」は、究極までに削ぎ落とされたフォルム。これだけでは、どこが雄鶏か?と疑問に思うかもしれないが、他の鳥と違って自由に空を飛ぶことができない雄鶏は、天を見上げて飛び上がりという気持ちを表現しているのではないだろうか?胴体の階段状の造形性は、まだに上昇をイメージしている。ロダンまでの造形とは、目に見えたものを具象的に象っていたが、ブランクーシは、その対象の意味や内面性を単純化し、象っているのである。
「雄鶏」
今回の展覧会は、かつてのブリヂストン美術館がリニューアルを行い、2019年にアーティゾン美術館として生まれ変わった。作品の多さと展示も素晴らしかったが、美術館の建築物も素晴らしかった。
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