編笠山、下山

頂上で、つかの間の休憩後、下山する。 山の大先輩は、「自分のペースで歩くように...」と言い残し、 濃霧で視界が悪いにもかかわらず、颯爽と降りて行ってしまった。


僕は、お言葉に甘えて、のんびりと歩くことにした。大きな岩が目の前に立ちふさがる。特に下山は、膝に負担がかかり、思ったよりもハードである。両手をついて、岩から岩へと飛び降りなければならない。雨上がりの岩場は濡れていて、飛び降りた時に足を滑らせて捻挫でもしたら大変なことになる。



先程、頂上で山の大先輩は、「携帯電話の電波が入らない」とおっしゃっていた。ここで、怪我でもしたら、山の大先輩は、僕を一人取り残し、救助隊を呼びに行ってしまうのだろうか?そうなったら、こんなところで、一人で何時間、待っていなければならないのだろう。虫とか蛇には、滅法弱い僕は、急に心細くなってきた。その時、足元がぬるっと滑り、下を見て「うわっ!」と叫んでしまった。蛇かと思ったら雨で濡れた木の根っこであった。


そんなことを考えながら、ひたすら、右足を出し、次に左足を出し、一歩一歩交互に足を前に出していると、霧も晴れ、太陽が出てきた。ちょっと、体力的にも慣れてきたところで、周りを見渡す余裕が出てきた。針葉樹の葉が、森の隙間から差し込んで陽射しを受け、鮮やかに映し出す。


これは、針葉樹の中でもヤツガタケトウヒと言われるものではないだろうか?約二万年前の氷期には、広く東日本に分布していた「生きた化石」と言われる植物。今では、八ヶ岳の西岳付近の海抜1,500m〜2,000mにのみ生える貴重種ということだ。


今回、登頂した編笠山は西岳の隣なので、西岳付近ということは、編笠山も含まれるのではないかと思う。資料となる、明確な写真があまりないので断言できないが、もしも、ヤツガタケトウヒだとしたら、初登山で苦労の甲斐があり、貴重種に出会えたとういうことだ。

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美しく、輝く、輪を求めて。

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