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執筆者の写真Hidetoshi Shinohara

考える椅子

人間は、考える葦である。とパスカルは言った。 ベランダのウッドデッキに置かれた椅子を見ていると、 どこか遠くを見つめて、人生の儚さを考えているように見える。



ただの椅子だって?そう、ただの木でできた、よくあるガーデンチェア。これをただの椅子という物質にしか見えない人もいるかもしれない。パスカルは、このような単なるガーデンチェアを見て思考をめぐらす人のことを「人間は自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない」けれど、「考える葦」でもあると言っているのではないか。


人間は、自然の猛威にはひとたまりもなく押しつぶされてしまう。だけど、人間は、その猛威を知っていて、恐怖を感じ取ることもでき、身を守ろうとする智慧さえも持っている。この椅子を見て、イマジネーションを喚起することもできる。そんな脆くて儚い葦は、考えることもできるのだと、パスカルは言う。


デザインだって、たんなるセンスだけでは済まされない。たった一本の線、色、形、書体のセレクト、写真のトリミングやレイアウト、全体のテーマ、ターゲット、市場、競合...を考えていかなければならない。クライアントの一言で木っ端微塵にも儚く消えて行くアイデア達。だけど、クライアントを説得して、「うむっ!」と言わせるのが、考える葦なのだ。

そう、我々の尊厳は全て思考のうちにあるのだから、デザインももっともっと考えよう。考える葦は、考えるデザイン。どうすれば心の奥深くに響くのか?

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美しく、輝く、輪を求めて。

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