小さな桜

小さな森の小さな池で、水面を眺めていると 上からハラハラと小さな桜の花びらが舞い降りて来た。


さくらを演じる倍賞千恵子さんは、「無個性という個性のある女優」と評されていたようだ。たった一枚のなんの個性もない小さな桜の花びら。


そんなことを考えていると、ぴったりと寄り添った二枚の桜が流れてきた。一枚が二枚に三枚にと、どんどん増えていく。



おいちゃん、おばちゃんが営んでいる、とらやという小さな団子屋には、さくら、博、タコ社長、寅さんのマドンナがいつも出たり入ったり、いつの間にか、商店街の人が集まり、準家族として存在する。


旅先で、寅さんは困った人を見ると「何かあったら、東京は葛飾柴又の帝釈天参道にある、とらやという小さな団子屋を尋ねて行きな。きっと、悪いようにはしねぇ」と捨て台詞を吐き、去って行く。


そんなことを言うものだから、みんな寅さんを頼って、とらやに集まる。おいちゃん、おばちゃんも、これがまた人がいいものだから、すぐ食事の支度をしてもてなす。


寅さんの恋愛談義で盛り上がったところで、突然の客は、「そろそろ時間なので...」というと、決まってさくらは「ねえ、泊まっていきなさいよ。いいでしょ」と別れを惜しむかのようだ。これが、団欒というものだ。小さな花びらもたくさん集まれば、賑やかになっていくものだ。

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美しく、輝く、輪を求めて。