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執筆者の写真Hidetoshi Shinohara

Raindorop 01

毎年、梅雨の季節になると鬱陶しく、いつもは早く夏が来ないかなあ?と思うのだった。

ところが、今年の僕は、ちょっと違う。5月から自粛要請が発令され、みんな引き篭もりになって人に会うこともなくなり、一人コツコツといろいろなことに取り組む毎日だった。



最近は、一人でコツコツがとても心地良く、人付き合いが悪いと思われているかもしれない。心の声は自分に正直だった。友達なんていなくてもいい。他人に依存するのではなく、自分がもっともっと豊かになり、発信していく立場にならなくては…


2年前から始めた、ピアノの課題曲にショパンのPrelude #15 In D Flat, Op. 28/15, “Raindrop”という曲がある。この曲に聴き入っていると、雨の日に散歩へと出かけていきたくなる。なんで、今まで雨の日の外出が嫌いだったのだろう?靴が雨で濡れ中まで染み込み、ズボンはグショグショに濡れ、髪は湿気でボサボサになるのがすごく嫌だった。

傘を刺してもなぜか、体の片側が濡れる。でも、こんなネガティブなイメージを吹き飛ばしてくれたのが、このショパンの曲だ。ぜひ、雨と共存してみたいとまで思うようになった。もっと間近で雨の表情を見たいと思った。


そこで、まだ、本格的な梅雨入り直前にノースフェイス原宿店へいき、ゴアテックスのレインジャケットを買って、雨の日を待ち遠しく待っていた。

6月の中旬になり、本格的に雨が降り始めた。仕事中に雨足が強くなってくると、胸騒ぎがして全身ゴアテックスに身を包み、カメラを三脚にくくりつけ、レンズにレインフードを被せ、オフィスから歩いて10分位の距離にある、外苑並木通りまで急いで行ってみた。


晴れ男の僕は、現地に着くと雨足が弱まってきて、創作意欲が萎えてしまう。通り沿いのカフェに入り時間を潰す。3時間位待ったが、天気予報は外れ、その日は雨が上がってしまった。そんなことを繰り返すこと3~4回、やっと土砂降りの雨になった。急いで、着替えて傘もささず出かけて行った。その日は、風も強く歩いている人々の傘はひっくり返っていた。僕は、全身ゴアテックスなので、傘なんかささない。なんて、雨の日は楽しいんだろう?こんなにワクワクするなんて。


外苑並木通りの辿り着くと、三脚を広げ、銀杏並木の下の小さな水溜りにカメラを向ける。ファインダーを覗きながら、「いいぞ、いいぞ、もっと降れ!」雨だれが、ポツンポツンと音がする。時たま、木の葉から舞い降りた大きな雨だれが、雨音に強弱を加える。 水溜りに落ちた雨だれが、一粒、一粒、ポツンと跳ね上がり、それがストンと落ちるとフワッと輪になって広がっていく。まるで、バレリーナがクルクルっと回ってストンとしゃがみ込んでいるようだ。


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美しく、輝く、輪を求めて。

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